TC協会ニュースWeb版 第67号

マニュアル業界標準化の第一歩
“電子マニュアル標準マーク”と“電子マニュアルの呼称”決定!

電子マニュアルマーク標準化WGリーダー
大和田 潤治 (キヤノン)

2004年度のTC協会・調査研究活動の中で「電子マニュアルマーク標準化ワーキンググループ」を新設し、「電子マニュアル標準マーク」と「電子マニュアルの呼称」を定めることができました。これを『電子マニュアル標準マーク−使い方ガイドライン』としてまとめ、2005年3月末に発刊しましたので、1年間の活動成果を報告します。

標準化活動の背景

パソコンの画面で見る「電子マニュアル」は、業界に急速な拡大を遂げていますが、実際に「ユーザー調査」などを行うと、電子マニュアルがいかにお客様に使われていないかの現状を認識させられます。電子マニュアル自身の「でき」以前に、「電子マニュアルがどこにあるのかわからない」、「起動方法がわからない」、「電子マニュアルがあることさえ知らない」などの根本的な問題に気が付きます。
  この問題に関して、2003年度の「CRXプロジェクト」活動の「CRXマニュアルWG(キヤノン、リコー、富士ゼロックス、セイコーエプソンの4社マニュアル標準化活動)」で着目し、電子マニュアル標準マークの検討がなされてきました。しかし、4社だけで共通化するよりもマニュアル業界全体の標準化に移行すべきとの提案があり、TC協会の2004年度の調査・研究活動の位置付けで「電子マニュアルマーク標準化WG」の活動をスタートしたしだいです。このWGでは、業界の標準化活動として、「電子マニュアルのユーザー認知性を向上させよう!」を目標に1年間の活動を行ってきました。

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活動概況と活動メンバー

「電子マニュアルマーク標準化WG」は、下記のメンバーで構成されています。

  • リーダー
    大和田 潤治 (キヤノン株式会社)
  • サブリーダー
    下村 純 (セイコーエプソン株式会社)
  • メンバー
    秋山 素夫 (株式会社リコー)
    金留 和行 (キヤノン株式会社)
    加藤 一由 (富士ゼロックス株式会社)
    指田 克行 (ソニー株式会社)
    山口 哲生 (富士通株式会社)
    山崎 敏正 (松下電器産業株式会社)
  • オブザーバー
    田中 克幸 (シャープ株式会社)
  4月28日の会合に集まったメンバーの方々
写真左から山口哲生さん(富士通株式会社)、秋山素夫さん(株式会社リコー)、指田克行さん(ソニー株式会社)、大和田潤治さん(リーダー:キヤノン株式会社)、山崎敏正さん(松下電器産業株式会社)、下村純さん(サブリーダー:セイコーエプソン株式会社)

前述の活動背景をベースに、CRX活動の4社に加え、パソコン、家電などの分野の方々がメンバーとして加わり、対象製品の範囲が広がりました。このため、標準マークのデザインコンセプトの意識合わせやデザイン自身の検討に思ったよりも時間を費やすことになりました。
また、業界のマニュアル関係者の間では「電子マニュアル」という呼称がすでに一般化してはいるものの、果たしてこの呼称はお客様が抱くイメージに適切であるかという点に、以前からTC協会でも疑問がもたれていました。このような経緯もあって、適切なイメージが初心者層のお客様にもより率直に伝わるような、「電子マニュアルの呼び名(呼称)」も同時に検討しました。

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活動の成果

このような目標とWGの定期的な活動により、下記の内容を盛り込んで業界での共通化を目指したガイドラインを作ることができました。

電子マニュアル標準マーク(モノクロの場合)

電子マニュアルは画面により利用するものであるので、その代表的なパソコンの画面からマニュアルが浮き出てくるイメージをモチーフにしてデザインしました。白黒・単色・カラー・ネガと4種のデザインパターンをガイドラインに盛り込んでいますので、これらの「使い分け」を十分にご理解いただき、利用の促進をお願いします。

電子マニュアルの呼称

ユーザーが視覚的に認知している「使用形態」に着目し、「画面」で「見る」マニュアルというユーザーの使用動作と認知を共通呼称、すなわち「画面で見るマニュアル」に定めました。
  「電子マニュアル標準マーク」とともに、この呼称を業界全体的に使用することで、より明確に「画面で見るマニュアル」の像をお客様へ浸透させることが可能と考えます。

電子標準マーク、共通呼称の活用範囲
電子マニュアル標準マークと共通呼称の対象マニュアルは、画面(モニター)で参照するユーザーマニュアルにお使いいただけます。また、お客様向けの提供物であれば、CDのレーベルやジャケット、カタログなどに積極的にアナウンスされることにも支障はありません。

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利用促進のお願い

「電子マニュアル標準マーク」と「画面で見るマニュアル」は、TC協会ホームページ(URL: http://www.jtca.org/)の調査・研究活動のサイトに、ガイドライン、電子マニュアル標準マークの活用データ、想定疑問・質問集(Q&A)などとともにまとめてあります。これらを参照いただき、社内への展開をお願い致します。また、「電子マニュアル標準マーク」と「画面で見るマニュアル」の利用が社内で決まりましたら、同Webサイトの「賛同書」にご記入いただき、TC協会へ賛同書をお送りいただけるようにお願いします。
各企業様の取り組みが業界浸透につながりますので、ご尽力をお願い致します。

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今後に向けて

TC協会のマニュアル制作の業界標準化としては、初のガイドラインです。今後も、調査・研究活動を通じて標準化も含めたWG活動の推進を行いますので、業界発展のためにも標準化へのご理解と各企業様の社内への展開をお願い致します。また、調査・研究活動では、今年のWG活動メンバーの募集も行う予定でおります。追って活動への参画をお願いいたしますので、ご協力をお願い致します。

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ユーザビリティー資格評価の研究成果まとまる

TC協会は、平成15年度にユーザビリティー資格認定制度に関する調査研究を行いました。ユーザビリティーを専門的な観点から評価するための基本的な特性とは何かを調べ、並行して行った各企業のユーザビリティー部門へのヒアリングに基づいて、ユーザビリティー業務のカテゴリーおよび各カテゴリーにおいて求められている人材を明らかにしました。
平成16年度は、この結果を踏まえ、特性をどのように測定し判定することができるかという面に焦点を当て、ユーザビリティーを専門的な観点から評価するための調査研究を行いました。この評価は、今後作成されるべき人材育成制度の判定の根拠ともなる重要な研究項目です。

活動概要
活動は、以下のプロセスを経て行われました。

  • ・コンピタンスリスト第3版への改訂
    昨年度(H15)の成果であるコンピタンスリストの第3版を見直すところからスタートしました。
  • ユーザビリティー活動の体系化
    ユーザビリティー活動全般を体系的に捕える作業を行いました。
  • ユーザビリティー実務者実態のウェブ調査
    ユーザビリティー活動に関わっている実務者、研究者を調査対象者にして、Webを利用した業界実態調査を実施しました。

報告書の内容
この調査研究の結果は、ニューメディア協会宛ての報告書としてまとめられました。その目次は以下のようになっています。

  1. 調査研究の概要
  2. 活動へのアプローチ
  3. コンピタンスリスト第3版への改訂
  4. ユーザビリティー活動の体系化
  5. 業界のコンピタンス所有状況に関する実態調査
  6. ユーザビリティーマネージメントに対する調査
  7. 活動関連部署に対する調査
  8. 有識者に対する調査
  9. ユーザビリティー活動リスト、コンピタンスリストの改訂
  10. ドキュメント分野におけるコンピタンスリストの位置付け
  11. 結論および今後の課題
    付録資料

※この報告書は、有償で入手できます。詳しくはTC協会事務局へお問い合わせください。

(まとめ:小谷 洋一)
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脱皮する、壁を破る

TCシンポジウム2005の吹野プログラム委員長に聞く!

TCシンポジウム2005 プログラム実行委員長
吹野さん(ソニー株式会社)

ことしのシンポジウムのテーマはずばり『脱皮!テクニカルコミュニケーション』とのこと、取りようによっては、いままでの実績を否定するようにも取れますが
実行委員会では、まず過去のシンポジウムのテーマをあらためて検証しました。確かに、そのときその時代にふさわしいテーマで歴史を刻んできたことがわかるのですが、ことしはさらに斬新なものにしたいという意識が強く、また、TCの世界自体が変わっていくべきであるという認識も以前からありました。そこで、もう一歩踏み込んで「変える」ことを前面に押し出す意味で、『脱皮』ということばを選んだわけです。実行委員会でテーマ決めの議論を重ねるごとに、メンバーの意識が「変えなくては」という方向に集中していった、という経緯もあります。

テクニカルコミュニケーションそのものが脱皮するのだ、と
ええ、われわれがTCから脱皮して何か別のことをやろうというのではありません。TCが脱皮して次に生きるべき道を見出そうということです。外的要因かもしれないし、われわれ自身がそうしてきたのかもしれませんが、テクニカルコミュニケーションに壁ができてしまいました。このシンポジウムが、壁を打ち破るきっかけになれば、と考えています。

テクニカルコミュニケーターという職種も以前とは変わってきましたね
同じテクニカルコミュニケーターと呼ばれる人たちも、それぞれ異なる立場を持つようになっています。どういう状況でTCに関与しているかによって、いろいろです。メーカー、制作会社、翻訳会社あるいはデザイン会社というだけでなく、ある人はよりエンドユーザーに近い立場で、ある人はより製品に近い立場で関わっていますから、それぞれが抱えるテクニカルコミュニケーションの問題もまたそれぞれです。お互いが利害関係を持つこともある。テクニカルコミュニケーションの業界は、その意味で他の業界に遅れをとっているのでは、と危惧されます。各立場のひとたちが、個々の問題を『脱皮』という視点で考えていただければと思います。

壁を破るのは簡単なことではないと思いますが
いえ、壁のおかげでわれわれはやりたい仕事ができにくい状況にあったとも思います。たとえば、パネルディスカッションのひとつに、仮題ですが、『テクニカルコミュニケーションをもっと売り込め!』というものを予定しています。これは、けっして単純に儲け主義に走ろうというのではなく、TCの仕事はもっと価値があるものだ、だから稼げる仕事であるはずだ、ということを考えようという趣旨です。
  あるいは、昔ながらの手順主義の説明でいいのかというと、そうではない。この製品はどんなコンセプトで作られたのか、それをしっかり説明すれば、そして操作手順は機械そのものがガイドすれば、いちいち説明書に書く必要はなくなります。

改めて『脱皮』についてお伺いしますが、どの方向に脱皮するとよい、とお考えですか
われわれテクニカルコミュニケーターが軸足としている位置を中心に据え、一方はモノ側へ、もう一方はユーザー側へ、というベクトルがひとつ。社会・技術環境やツールの視点と、人材や専門性の視点がひとつ。それらをマトリックスに配置して浮かび上がる切り口を、シンポジウムではできるだけバランスよく取り上げたいと考えています。

ことしの基調講演についてお聞かせください
お客様、つまり人間はモノをどのように使うのか、わからないと使えないとはどういうことなのか、それはいったい何に起因するのか、といったことを、「生態心理学」という新しい分野の学問から考えたいと思います。講演にお迎えするのは、東京大学大学院情報学環・教育学研究科教授で生態心理学を専門にされている佐々木正人先生です。
 
生態心理学とは、どんな学問なのですか
身体行為の観察を繰り返して、モノと行為の相補的関係を理論付けしていこうというものです。はじめに理論ありき、といったタイプの学問ではありません。J・J・ギブソン(1904−1979)によってはじめられた新しい心理学で、ギブソンの用語で最近よく聞かれる「アフォーダンス」はその重要な概念となっています。新しいモノ作りのヒントになるといいですね。

TCとの関連はどうなのでしょうか
その部分でのお話をすすめるために、講演の後半ではTC協会育成・普及専門委員の市川美知さんにインタビュアーとして登場していただくことになっています。

(取材・構成:小谷 洋一)
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2004年度TC技術検定実施結果報告

去る2月13日に実施された、2004年度の「テクニカルコミュニケーション技術検定試験」の合格発表がありました。その結果が、例年と同じように、採点結果の得点分析やアンケートの集計としてまとまりました。2年目を迎えた枠組みとして、それぞれの得点分布には特徴が見られるようになりました。また、今年度から、新しい受験者サービスとして得点通知を行いました。そこで、得点通知の見方について解説しましょう。

実施結果報告

「検定実施結果報告」は、採点結果や受験者に関して公開されている統計情報で、協会のホームページに試験の種類ごとに掲載されます。過去8年間、テクニカルライティング2級・3級の結果もすべて掲載されていますので、比較しながら分析することもできます。

得点通知の見方
 得点通知で示されている数字は、素点ではなく、次の計算式で100点満点に換算して何点か、つまり得点率を表しています。
   ※学科得点=学科試験の得点÷学科試験の配点×100
   ※実技得点=実技試験の得点÷実技試験の配点×100

受け取った得点は、それぞれの試験の学科・実技の得点分布グラフと比較してみてください。グラフは、各試験ごとに、学科・実技・合計のそれぞれの正解率についての分析を掲載しています。掲載の内容は、正解率の最高・平均の値と、得点率の2%刻みの分布です。
学科と実技がそれぞれどのくらいの得点で、全体から見るとどのくらいの位置なのか、平均より上か下かをみることができます。たとえば、同じ合格でも、高い点数で合格しているとか、ギリギリで合格しているようだといった推測ができます。
また、学科と実技の得点率の違いをみて、弱点や苦手がどちらなのかがわかります。実技より学科が悪い場合は、知識不足な箇所があるということですから、ガイドブックを読むなどして、知識の確認をします。逆に、学科より実技が悪い場合は、実務で注意されたことやミスを振り返り、実務を通して経験を積んでいきます。
なお、次表は、ライティング上級の分析結果です。上級を受験した方は、平均と比較してみてください。また、グラフは、協会ホームページを参照してください。

表:「ライティング上級」得点率
単位:%(それぞれの配点に対する得点率)
  最高 最低 平均
学科得点率 80 56 66.2
実技得点率 76.4 40.2 57.1
合計得点率 78.2 51.1 61.7

今後の実施について
次回の検定実施概要の発表は、9月上旬を予定しています。

■TC検定についてのお問い合わせ先
●TC協会事務局
   Tel:03-3368-4607
   Fax:03-3368-5087
   お問い合わせ先
   ホームページ:http://www.jtca.org/

(まとめ:TC技術検定実行委員長 高橋尚子)
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森口先生の連載コラム

てぃー・しー 今昔(一)

TCって、何?

「今更、何を?」と思われるかもしれない。しかし、マニュアル制作の実務や翻訳の苦労話ではなく、TCについての理屈を語ろうと思うと、いつもここから始めなければならない。

そのTCの定義については、恐らくTC協会会員の中でも、意見が分かれるところではないだろうか。協会のホームページには、「テクニカルコミュニケーターは、情報を整理してわかりやすく伝える専門家です。」と、それこそわかりやすく書かれているが、では、テクニカルコミュニケーター以外の人たちは「テクニカルコミュニケーション」ができないかというと、そんなことはない。テクニカルコミュニケーターというプロフェッショナルが生まれるずっと前からTCは存在したのである。で、そのTCとは何なのか。この連載では、日本歴史の中でのTCを拾いあげていくつもりだが、始めるに当たって、まずは、TCの定義を明確にしておきたいと思う。

「テクニカルコミュニケーション」というからには、TCもコミュニケーション活動の一つである。そのコミュニケーション活動の中でTCがどういう位置づけにあるのかを見ることによって定義してみたい。

コミュニケーションをその目的から分類すると、2つに分けることができる。一つは、情報や知識を伝えるためのコミュニケーション、もう一つは、感情を伝えるコミュニケーションである。たとえば、既に死語になりつつあるが「ノミニケーション」という言葉がある。酒でも飲みながら親睦を深めようということだが、このコミュニケーションの目的は感情を伝えることにある。飲んでいる間に仕事の情報を交換したり、小難しい理屈をこね回したりすることがあったとしても、その目的は「仲良くなる」つまり「親愛の情を伝えあう」ことである。一方、クレジットカードの明細書は、そのカードを使ったために、どれだけの金額が銀行の口座から引き落とされるかという情報を伝えることが目的である。「ありがとうございました」と、あたかも感謝の気持ちを表すかのような言葉がどこかに書かれてあったとしても、明細書の目的は情報を伝えることである。もし、感謝の言葉だけがあり、金額が明示されていないとすれば、そのカードユーザーは即刻契約を打ち切るだろう。この2種類のコミュニケーション、情報や知識を伝えるコミュニケーションを知的コミュニケーションと呼び、感情を伝えるコミュニケーションを情的コミュニケーションと呼ぶことにする。

TCが知的コミュニケーションの一つであることは言うを待たない。とはいえ、知的コミュニケーションがすべてTCというわけではない。TC以外の知的コミュニケーションの代表例が学校教育である。教師が質問を発し、生徒がそれに答える。教室でのやり取りでも、宿題でも、テストでも、この構図は変わらない。仮に、情的コミュニケーションが付随的に存在することがあったとしても、生徒からの解答は知的コミュニケーションにほかならない。しかし、それをTCと呼ぶ人はいない。何故か? 情報の受信者である教師が答えを知っているからである。TCの基本は、情報や知識を、それを知らない相手に伝えることであり、そのため生徒の解答はTCの範疇外となる。

もう一つ別の角度から見よう。コミュニケーションには、双方向のものと一方向のものがある。双方向のコミュニケーションでは、受信者と発信者が頻繁に入れ替わる。たとえば、普通の会話は双方向だが、スピーチやプレゼンテーションは一方向である。TCは、テクニカルコミュニケーター自身が意識しているかどうかは別として、一方向のコミュニケーションである。そのため、お互いの考えを交換しながら結論を出していくような建設的な会議(そうでない会議も時々あるようだが)でも、これをTCとは呼ばない。では、Webはどうか。Webはユーザーがクリックして自分の必要な情報を探していくから双方向ではないかという声が聞かれるかもしれない。しかし、Webのデザイナーはユーザーから尋ねられて初めて答えを出すのではない。Webデザイナーはそのサイトを訪れるユーザーの行動を予測して設計する。予測つきであっても、一方向のコミュニケーションであることに変わりはない。

最後に、「コミュニケーションの意図」という点から考えてみる。太郎と次郎という人物がいたとしよう。太郎は次郎が隠している宝物のありかを知るために、こっそりと次郎の言動を観察している。次郎の言動が太郎に伝えるのは、感情ではなく、知的情報である。その情報は太郎にとって未知のものであり、かつ、太郎と次郎の間に双方向のコミュニケーションはない。この場合、太郎は次郎に対して、TC活動を行っているのだろうか。もちろん、「否」である。発信者である次郎が、受信者である太郎に何かを伝えようという意図がないためである。では、仮に、次郎のほうでは、太郎が自分を見張っていることを知っていて、宝物のありかをそれとなく教えてやりたいと思い、わざとそういう言動を取ったとしよう。この場合は、次郎は太郎に対してTCを行っていると言っても良いだろう。
さて、これまでの話でTCの大枠が見えたと思う。これに、多くのテクニカルコミュニケーターが意識する「わかりやすく」という要素を付け加えると、TCを次のように定義することができる。「TCとは、受信者の知らない情報や知識を、伝える意図を持って、一方向的に、わかりやすく伝えるコミュニケーション活動である。」(わかりにくい定義になってしまったが…)

では、「わかりやすく」とはどういうことなのか。それについては、次回、TCの歴史を振り返りながら考えてみたい。

(広島国際大学 森口 稔)
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シリーズ TC 最・前・線

日本ビクター株式会社

会社プロフィール
高品位の技術がブランドを支える、という理念から、「お客様に最高の感動と100%の満足を」をビジョンとして世の中に約束、音楽と映像のメーカーを出発点に、ネットワーク技術の強化により、新しいコミュニケーションとエンタティンメントの企業を目指す。

シリーズTC最前線の第2回は、日本ビクター株式会社横浜工場を訪問。AV&マルチメディアカンパニーホームストレージカテゴリー横浜技術推進室取説グループの清水祐貴リーダー、井上彰主席技師、星野初枝さんのお三方にお話を伺いました。

「協会の運営活動への参加は、社内のマニュアル制作担当者の育成としてのねらいがあります。活動に参加してみて、シンポジウムや勉強会など協会が準備するプログラムに参加するのとは違った効果を強く感じています。各社の同じ業務をされている方と一緒に活動していると大変触発され、勉強になります。そのうえ、メンバーの皆さんと親しく交流でき、情報交換をすることにより、当社の制作にも反映できることもメリットですね」と清水さん

マニュアルデザインセンターの組織についてご説明ください
当横浜工場では、DVD、テレビ、ビデオカメラなどのAV機器のマニュアル制作業務を担当しています。オーディオやその他の製品のマニュアルは、前橋、大和と八王子の工場で制作しています。これらの制作部門を横断的にまとめた組織として「取説技術委員会」があり、CS本部管轄のもと、2ヶ月に一度の開催で、全製品の取説制作に共通する基準・ルールづくりや今後の方向性などの検討を行っています。委員会には、相談センターの担当者にも参加してもらい、お客さまの声を収集し、制作に反映しています。また、松下グループにおける「取説技術委員会」にも参加し、情報交換を行っています。現在、社内における制作担当者は総数で約30名ですが、内部では制作管理ならびに制作、デザインの方針策定などを主体に行い、実際のマニュアル制作は、ほぼ100%外注しています。

「ビジュアルやレイアウトは確かにマニュアル制作にかかせない要素ですが、やはりライティングが極めて重要であり基本であると、最近強く感じています。電子マニュアルにしても文章は不可欠です。文章能力を向上させなくては良いマニュアルは作れませんね。今年は、協会の「テクニカルコミュニケーター育成講習会」を受講しようと思っています」と星野さん

貴社のマニュアル制作の方針をお聞かせください
目標として3つの段階を考えています。第一段階はページ数を減らして「読む気にさせる」ことです。マニュアルのページ数があまりにも多いとお客様が読む気にならないという傾向を回避することは当然ですが、当社にとっては、コストダウンにも大きく寄与するものです。とはいえ、操作に大切な情報まで失われたり、紙面に情報を詰め込みすぎて読みにくくなってしまわないようにすることが大変です。そのため、ホワイトスペースの確保、ビジュアル化、見開きでの説明など工夫しています。この活動は着々と成果を上げており、たとえばデジタルビデオカメラのマニュアルのページ数は、これまでの約半分に削減できました。
今後の取り組みになる第二段階では、「商品に説明要素を組み込む」ことを目標にします。基本操作部分はシステムとして製品にあらかじめ組み込んでしまうことを狙いとします。製品コストがそのぶん高くなってしまうという現実問題をいかに吸収することができるかが課題です。最後に、第三段階ですが、「商品に取説を組み込む」ことをめざします。

「マニュアルコンテストの実行委員を3年務めました。各社のマニュアルを数多く見ることができますし、評価に関する審査員のいろいろな意見も聞けるなど得るところは沢山ありました。実際に活動に参加しないと、このような良さは体感できませんね。協会も、各種プログラムへの参加の呼びかけだけではなく、運営面への参加とそのメリットをもっと会員に訴えてはいかがでしょう」と井上さん

海外向けマニュアルの制作は
過去、国内向けとは異なるスタイルで、説明文を主体にしたマニュアルを作成していましたが、調査をしますと、海外においてもイラストを多用したマニュアルの評価が高いということがわかり、国内向けマニュアルのデザインを海外向けのものにも取り入れるようになりました。ただ、場合によってはレイアウトに苦労することがありますね。

協会活動に期待したいことはございますか
カタカナ表記に関する調査研究など、たいへん有意義な標準化活動がされていますが、当社としては、電子マニュアルのあるべき姿やマニュアルにおけるユニバーサルデザインの具体的な定義などに関する調査研究活動が実施されることを期待しています。

(取材・構成:三堀 邦夫、小谷 洋一)
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私のコミュニケーション考

株式会社三菱電機ドキュメンテクス/工学院大学 非常勤講師 村田 碩

会社ではコンピューターや家電製品の取扱説明書の制作を、大学ではTC(Technical Communication)講座を担当している村田碩さん。本ニュースが発行される頃には62歳となり、毎日が日曜日となる日々を迎えます、とのこと。

工学院大学で平成6年から担当しているTC講座で、受講者が発した言葉から今時の学生気質の一端を垣間見ることができました。(私のコミュニケーション不足のせいかも知れませんが。)
講義内容の詳細については、受講者が書いた「工学院大学TC見聞録」をご一見ください。
URL:http://www.isc.meiji.ac.jp/~itaru/tc/tc.html

携帯で写真、撮っていいですか
数年前に、女子学生が発した言葉で、即、OKを出しました。授業風景や私を撮るのかと思ったら、スクリーンに映るPowerPointにシャッターを切っていました。
携帯電話のカメラでそんなに遠くても撮れるの?(私の知識不足でしたが。)
昨年は、男子学生が「講義で使用しているPowerPoint、これにsaveしてください」とUSBメモリーを持ってきました。
送り手の手段が板書からパソコン(PowerPoint)に変わってきているので、受け手の受け取り方も「ノートから他の手段に変わってもおかしくはない」とは思いつつも、著作権うんぬんと訳の分からぬ理由でお断りしました。
実施している大学もあるようですが、「face to face の講義からインターネットを活用したオンデマンド講義の時代到来か」と思うこの頃です。

大相撲、どんなスポーツかよく分かりません
講義では、曖昧な表現の教材としてスポーツに関する基準や規則を取り上げています。
・五輪選手選考基準の曖昧さ⇒高橋尚子選手が代表から外れた、アテネ五輪マラソン選手選考基準は、「五輪でメダル獲得または入賞が期待される選手」です。
このままの基準では、2008年の北京五輪の選手選考でももめますね。
・横綱昇進の規則の曖昧さ⇒ ハワイ出身の大関小錦(現在、タレントのKONISHIKI)が「13勝で優勝」→「12勝」→「13勝で優勝」の成績でしたが、横綱に昇進できず、「外国人差別」と騒がれました。横綱昇進の規則は、「二場所連続優勝、または、それに準じる好成績を挙げた大関」です。
このままの規則では、外国人力士が多くなっているので、第二の小錦事件が懸念されますね。(2005年三月場所現在、幕内力士40人中、横綱朝青龍(モンゴル出身)など10人が外国人力士です。)
こんな話をしたところ、「大相撲、観た事もない。幕内って? どんなルール?」の声でした。(アンケート結果:約35%の学生が大相撲のルールなど、余り知りませんでした。)
遊びといったら相撲と野球の世代にとって、理解できない声でした。取組のビデオをみせ、「年、六場所開催し、一場所は15日、丸い土俵で取り組む(戦う)」などと解説しています。NHKが放映しなければ、忘れられてしまうところですね。
「スポーツの多様化、分かるけど、日本の伝統スポーツも忘れないで欲しい」と毎年、大相撲の話しを続けています。
スポーツの規則の曖昧表現について、「日本語の曖昧さで起こる事件、事故に関して」のテーマで、弊社のHP(M's Garden)に連載していますので、お時間がありましたら、ご一見ください。
URL:http://www.melga.co.jp

取扱説明書を作る人、尊敬しちゃいます
初めて使用する国に輸出する事を前提とし、A4サイズ1枚で、ホッチキスやシャープペンシルの取扱説明書制作の課題を実施しています。
制作しての感想の中に:
・日頃使っている物なのに、自分の知っている事を分からせるのがこんなに難しいとは思わなかった。
・「折れた芯は使えません」、「外した針は使えません」など、人によって常識が違うのが分かった。
そして、「1枚書くのでもめちゃ苦労したのに、分厚い取扱説明書を作る人、尊敬しちゃいます」との感想がありました。(こちらが照れくさくなる言葉です。)
今の学生さん、やらせてみるとちゃんと分かってくれますよ。「社会人になっても、この気持ち、持ち続けて欲しい」と願うばかりです。
最後に、受講者が発した言葉をコミュニケーションの観点からみると、「相手(人、製品など)の状況を良く理解する事でいろいろな事柄が見えてくる」ということで、学生さんに教えてもらったという感がします。

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TC-INFORMATION

会員企業ひとことメッセージ

■株式会社テックス
●会社概要、マニュアル制作について
1984年に海外広報および技術情報専門のプロダクション会社として発足、今年で21周年を迎えます。中国現地法人を含む約100名の制作者、翻訳者が、国際企業のサービスマニュアル、取扱説明書、カタログ、Webサイトなどを制作しています。昨今は電子メディアの特徴を活かし、カスタマーサポートセンターなどに最適な、マニュアル・技術情報をDBで一元管理し瞬時に検索・閲覧できる「テクニカルeビューアーシステム」を開発・提供し、好評を得ています。

●協会にひとこと
激しい技術革新とコスト競争、ユーザビリティーの追究、海外現地法人の運営など、制作会社として走りながら考え、行動しなければならないことが山積しており、それらを効率的に解決する業界標準・共通認識を学ぶ場として入会しました。多数のクライアント企業と制作会社が集っており、意見調整役として、また、両者のコラボレーションの促進や制作会社の地位向上に力を注いでいただきたいと希望します。

■ダイテック
●会社概要
1987年設立。本社は広島で、東京、京都、福岡に事業所があります。
オペレーションマニュアル、サービスマニュアル、トレーニングマニュアルなどの各種マニュアル制作をはじめ、パーツカタログ制作やPL・製品安全に関するコンサルティングなど、付加価値の高い技術提供を目指してきました。

●マニュアル制作について
制作の現場では、自動車、半導体製造装置、産業機械のマニュアルを中心に、実機取材から原稿作成、イラスト作成、技術翻訳、DTPなど制作全般をトータルで請け負っています。
近年は「コスト削減、マルチメディア対応、多言語展開対応」をキーワードに、ドキュメントソリューションの分野に注力しています。
また、コンテンツとITの融合を目指し、当社独自の「技術ドキュメント向け汎用SGML文書処理システム(FTDS)」や「技術ドキュメント向けレイアウトソリューション(FLS)」を構築しました。

●協会にひとこと
TC技術検定試験の受験によって、よりレベルの高いテクニカルライター、ディレクターの育成を図り、マニュアルの品質向上に結びつけていきます。
また、シンポジウム・マニュアルコンテスト・セミナーなどへの積極的な参加を通じて、業界を取り巻くさまざまな情報を共有していきたいと考えています。ゆくゆくは、18年培ってきたノウハウを生かすべく、マニュアルへの課題や問題点に対して、効果的な提言ができる存在になることを目標としています。

■プラネットコンピュータ
●会社概要
最終成果物が電子文書(PDF等)となる電子マニュアル、仕様書、電子申請文書等を効率よく作成する為のシステムを提供するソフトウエア会社です。次のようなシステムを販売しています。
・海外を含む複数の遠隔地とPDFを介して校正を行なうことが可能となる電子校正システム「WebProof3.0」
・PDF上のリンク作成および確認作業を容易にするツール「SpeedLinker」
・仕様書、製造指示書、電子申請文書等を自動作成するシステム「OpenFlow2.0」
上記の製品の他に、マニュアル作成を効率化する為のプラグイン開発、Webシステム開発等を行なっております。開発事例に関しましては、弊社のホームページをご覧いただけると幸いです。
http://www.planetcomp.com/
e-mail:info@planetcomp.com

●協会にひとこと
マニュアル制作を効率化する為のセミナーなどを定期的に開催していただく事を希望します。

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協会短信

個人情報の管理について
本年4月1日から施行の「個人情報保護法」に基づき、TC協会では会員の個人情報を以下のように管理します。
 
協会で保有または収集する個人情報は以下のとおり
 ・会員名簿
 ・協会が実施する各行事および諸活動の参加者・応募者名簿
 ・協会活動委員会ならびに諸活動実施に携わる委員などの名簿
会員の個人情報は下記の目的での利用に限定
 ・協会会員の登録、更新、変更などの管理
 ・協会公式行事ならびに協会諸活動の案内・告知
 ・協会関係資料などの配布
会員の個人情報の適正管理の徹底
個人情報の紛失、盗難、改ざん、漏洩ならびに個人データベースへの不正アクセスなどがないよう、協会事務局内に管理担当者を任命、保管体制を構築し、安全管理を徹底します。
第三者への会員個人情報の開示・提供の制限
法令に基づく場合をのぞき、個人情報は第三者への開示・提供はしません。従来、年に一度発行していた「会員名簿」は、2005年度から配布を取りやめます。

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TC協会ニュース 第67号 2005年5月30日発行
*次号は2005年8月15日発行の予定です。
*会員連絡先が変更になった場合は、TC協会事務局(こちら)までご連絡ください。

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