TC協会ニュースWeb版 第62号

会員のニーズに応え、あらたな「マニュアル評価サービス」を開始

4月末から開始されることが決まった「マニュアルの評価サービス」について、協会マニュアルコンテスト/ マニュアル評価専門委員長の徳田直樹さんに抱負をうかがいました。徳田さんは、マニュアル制作、ソフトやユーザーインターフェースのローカリゼーションに実績をもつ(株) パセイジの代表取締役で、忙しい会社の経営にもかかわらず、協会の運営委員として多大な尽力をされています。

 マニュアルコンテスト/マニュアル評価専門委員長の徳田直樹さん

●最初に評価サービス開始のねらいを聞かせてください
マニュアルコンテストは年一回の実施のため、個々の会社がいつでも評価を依頼でき、評価項目に対する希望にも応じるような、より弾力的できめ細かな評価サービスに対する要望が寄せられていました。新しい評価サービスは、このニーズにお応えしたものです。

●新しい評価サービスの特徴は?

  • 随時、評価を申し込めること
  • 申し込まれたマニュアルを対象とした単独評価であること
  • 対象製品を実際に使った上で評価をすること(実機評価)
  • 評価は経験豊富な担当者が行うこと
  • 評価項目などに関して、個別の要望に対応できること
  • 評価レポートを提出すること

などが挙げられます。
とくに強調したいのは、評価レポートにはさらなる品質向上につなげるための改善提案を盛り込むという点です。評価基準はマニュアルコンテストで使用しているものがベースですが、対象製品やユーザー層に応じた評価ポイントを追加することになります。また、評価する業種や製品には限定せず、どんな商品でも評価を受け付ける予定です。残念ながら、外国語のマニュアルは除外させていただきます。

●実機評価が特徴とうかがっていますが
機密保持や製品のサイズによっては、社外に持ち出せないこともあると思いますが、状況に応じて出張評価をするつもりです。

●費用はいくらでしょうか
標準料金は、出張実費を除き、会員には1種あたり25万円(非会員料金は30万円)といたしました。評価の希望内容や対象によっては別途見積りを行います。この金額の設定は、メーカーにおいて、稟議書の対象とはならず、自部門内で決済可能な範囲と判断したものです。また、外部に依頼した場合での標準的な金額でもあります。

●評価依頼の受注の見込みはありますか
受注の自信はあります。検討段階でのヒアリングでも、すでに何社かの打診をいただいています。制作部門の品質向上は永遠の課題であり、自社のマニュアルの品質は常に把握しておく必要があるはずです。ぜひ活用してください。

●マニュアル評価に関しての今後の見通しは?
モノづくりの現場では、製品の機能、操作性、ユーザーインターフェースを決めるのは開発者であるというのが実情です。だいぶ改善されてきたとはいえ、開発部門のユーザーの立場にたった開発・設計という認識が、まだまだ十分でありません。これが進まない限り、マニュアル品質の抜本的な向上にはつながりません。制作者の技術向上とともに開発者への啓蒙が進むことを期待します。
さて、マニュアルコンテストについては、協会の知名度の向上とともに、コンテストの認知度も上がってきました。また、シート・パッケージマニュアル部門を新設した効果もあり、今年の応募数は昨年より2割も増加しています。
個別評価に関しては、今後他社マニュアルとの比較や応募会社独自の特定の評価など、条件つきの評価に関する要求が増してくると思います。また、外国語マニュアルの評価なども含めて対応策を早期に構築していく必要があると思っています。
最後にPRをひとこと述べさせてください。今回の個別評価はコンテストで蓄積された評価ノウハウを活かした協会ならでの評価サービスです。積極的な利用をお待ちしています。

(取材・構成:三堀 邦夫)

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ユーザビリティ資格認定制度の意義とは
調査研究プロジェクトチーム座長
黒須 正明 (文部科学省メディア教育開発センター教授)

TC協会は、平成15年度の受託事業として、ユーザビリティ資格認定制度に関する調査研究を行いました。その成果が報告書としてまとめられましたが、調査研究のリーダー役を務められた黒須教授に、本研究の意義を語っていただきました。

調査研究の背景とねらい

テクニカルコミュニケーターの業務内容は、メディアの電子化が進展するにつれ、WEBデザインなど情報デザイン全般にわたる極めて幅広いものになってきました。それに伴い、情報デザインにおけるユーザビリティの向上が大きな課題となっています。そこで、これまでTC協会が行ってきたWEBデザインのユーザビリティに関する研究成果を踏まえ、ユーザビリティを専門的な観点から評価および指導できる人材の育成が必要との認識にいたりました。

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これまでの調査研究

TC協会では、すでに「情報機器のユーザーガイダンスに関する調査研究」をとおして電子ドキュメントを軸にした周辺技術と関連ツール類に関する動向を掘り下げて検討、さらに「Web情報の制作ガイドラインに関する調査研究」で、電子ドキュメントにおける情報デザインのユーザビリティ・ガイドラインをまとめました。

平成14年度には、「情報機器のユーザーインタフェース技術」に関する研究において、情報の内容をわかりやすくユーザーに伝える電子ドキュメント制作におけるユーザビリティ・ガイドラインの実証的検討を行いました。

ユーザビリティ資格認定制度に関しては、ユーザビリティ分野の専門学会であるUsability Professionals Association (UPA)において先行的な検討が進められており、アメリカやイギリスでは、すでに独自の基準設定が試行されています。日本でもユーザビリティ活動の重要性は次第に強く認識されるようになっており、資格認定制度を確立してユーザビリティに関する専門家の人材育成のキャリアパスを解明することができれば、国民全体のユーザビリティ活動の活性化にもつながることが期待されます。

ユーザビリティ資格認定制度について

■制度の必要性
現在、ユーザビリティに関係した業務に従事している人は、日本全体でおよそ300名程度と推定されます。ヒューマンインタフェース学会のユーザビリティ専門研究会に登録している会員が約150名であり、それが関東地域を中心に活動していることから、日本全体では約2倍になるだろうという根拠に基づいた数字です。近年、WEBユーザビリティが注目され、関連した書籍が国内だけで10冊以上刊行されている状況であり、ユーザビリティの必要性を認識している人口は、これまでユーザビリティ活動を推進してきた製造業関連の人々を含めると、前記の約20〜30倍、6000〜9000人程度ではないかと推定されます。
このように、ユーザビリティについては今後さらに関心が広がってゆくと思われますが、その業務内容はそれなりの専門性を持っており、一般の人々が関心をもったからといって、すぐに実行できるものではありません。また、現在ユーザビリティ関連の業務に従事している人は多くの部門に分散して所属しており、ユーザビリティの専門部門にいる人は少数です。
こうした状況から、ユーザビリティに関連した職分を明確化することが必要となります。そのための一つの方策として、ユーザビリティの資格制度の設立が効果的であり、必要であると考えられます。

■関連する資格制度
ユーザビリティに関連した資格制度としては、日本人間工学会が最近スタートさせた人間工学資格認定制度があります。ここでは、ユーザビリティも一つの重要な要素として認識されており、ユーザビリティ資格制度と重複する部分もあります。しかし、基本的には人間工学に関する資格制度であり、ユーザビリティ活動にとって有用ではあるが必須ではない事項も多数含まれています。
また、人間工学の場合は、それを専門とする学科がすでにあり、出身学科を一つの条件とすることにも意味があるといえますが、ユーザビリティの場合、少なくとも現在は専門の学科はなく、活動に従事している人の背景には、心理学、人間工学、認知科学、社会学、民族誌学、医学、情報科学、システム工学、電子工学、機械工学など実に多様なものがあります。そのため、出身学科における学習を条件とするのではなく、実務の中で学んだ知識やスキルなどを基準にした資格制度が別途必要と考えられるわけです。

■ユーザビリティ業務の多様性
ユーザビリティに関する資格制度を検討する場合、重要なポイントの一つはその業務内容の多様性です。1990年代まで、ユーザビリティの活動はそのほとんどが評価に関するものでした。しかし、近年ではユーザビリティの概念が拡大し、ユーザーに適合した製品やシステムを提案することもその範疇に含めて考えられるようになり、そのためにフィールドワーク手法のような新しい手法を熟知した担当者も必要となりました。また、ユーザビリティが組織経営における一つのスタンスとしてもとらえられるようになり、経営学の立場からユーザビリティに関連した業務分析やコンサルテーションを行うこともその活動範囲の中に含まれることになりました。
このように、ユーザビリティが企業経営の中心理念の実現に関わる大きな課題として再認識されるようになると、要素的な手法をマスターしただけでは不十分で、広範な知識と経験が要求されるようになります。これを一人のユーザビリティ担当者に要求するか、それとも複数の種類のユーザビリティ担当者を想定するかという点は、今後検討を要するポイントです。

■日本において資格制度を設立する意義
ユーザビリティ活動に関して、日本はある意味で後進国、ある意味では先進国といえます。企業のなかにユーザビリティに対する認識が一つの底流として存在している欧米に比較して、日本ではまだその水準まで到達しておらず、その意味では後進国です。しかし、ISO13407に対する関心が国内の製造業にかなりの程度浸透しているというような意味では先進国といってもよいでしょう。
このように、日本におけるユーザビリティ活動は、欧米の他の国々とは若干異なった背景をもち、現状に至っています。
また、QCに見られたように、いったん重要と認識されると組織ぐるみ、国ぐるみでそれに取り組むという国民性も特異なものであり、利用品質としてのユーザビリティの重要性が認識されると、そのような爆発的な状況になることも予想されます。
このような特殊な状況にある日本で、その状況に合わせて資格制度を設立することは、前述の理由から意味があると考えられます。

■TC協会において資格制度を検討する意味
ユーザビリティに関する専門組織としては、ヒューマンインタフェース学会のユーザビリティ専門研究会が存在しており、それとは別にTC協会でユーザビリティの資格制度を審議する意味については確認しておく必要があるでしょう。
前記のようにTC協会でもユーザビリティの必要性が認識されるようになってきたことがその理由の一つであり、また、TC協会では既にテクニカルコミュニケーターに関する資格制度を運用してきており、資格制度についての実経験を有しているということがもう一つの理由です。
実際に資格制度を運用するにあたってはユーザビリティ専門研究会などとの連携は必要であり、また効果的と思われます、TC協会において原案を審議していくことにはそれなりの意味があるといえます。
このような認識をふまえ、ユーザビリティ資格認定制度に関する調査研究を実施しました。

上記の趣旨に基づきTC協会が行った調査研究の成果は、ニューメディア協会宛ての報告書『ユーザービリティ資格認定制度に関する調査研究』にまとめられています。この報告書は、有償で入手できます。詳しくはTC協会事務局にお問い合わせください。

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TCシンポジウム2004:
マニュアルに盛り込む情報そのものを、もう一度考えませんか
プログラム委員長に聞きました

 TCシンポジウム2004プログラム委員長の方波見さん

TCシンポジウム2004は、開催に向けてその企画が着々と進行中です。企画を担当するプログラム委員会のリーダー、方波見浩さん(富士通ラーニングメディア)を訪ねて、お話を伺いました。

●今年のシンポジウム、いままでと変わった点は?
今年は、プログラムとガイドブックを一本化します。昨年までは、シンポジウムが近づくとプログラムを配布し、シンポジウム当日はガイドブックを配布していました。これですと、内容に重複するところも多く、参加者は当日どちらを見ればよいのか迷うこともあったかと思います。そこで、今年は事前配布のプログラムに必要な情報をすべて盛り込むことにしました。当日は、会場案内図などを簡単にまとめたガイドマップをお配りするだけ、ということになるかと思います。事前配布のプログラムの段階で充実した内容をお伝えすることができるわけですが、一方、シンポジウム実行委員会の担当者は、その分苦労もしています(笑)。

●全体テーマとその意図についてお聞かせください
全体テーマは、『使うために作る、作るために創る』です。『凝縮と選択の智恵』というサブタイトルで、全体テーマに込められた意味を具体的に表しました。商品の使いかたを説明するとき、使う側にとってすぐに欲しい情報とそうでない情報を選別し、伝えるべき情報をよりコンパクトにまとめる必要があるだろう、「智恵」を働かせて「創る」必要があるだろう、という意図があります。これを下敷きにして、だれにとっても使い勝手のよいマニュアルを「作る」ことを目指そうというのが今年のシンポジウムの大きなテーマになります。デジタル家電をはじめとする商品について、ユーザーに知らせなければならない情報は膨大です。膨大な情報を、一から十まで同じ扱いで並べて提示していてはマニュアルの用をなさなくなってしまいます。たとえば、パソコンが黎明期の商品から成熟商品へと変化した以上、マウスの使いかたひとつとっても、その説明の優先度、情報量、見せかたを考え直す時期にあるはずです。

●パネルディスカッションには、全体テーマがどう反映されるのでしょう
それぞれのパネルディスカッションも、皆さんがもっとも関心を持っていることがらを、全体テーマに即しながら企画しています。ライティングを扱うパネルディスカッションでは、シングルソース・マルチユースを取り上げて、「凝縮と選択」を考えます。評価を扱うパネルディスカッションでは、使いかたの変化に対応したマニュアルの作りかたを議論します。まさに「使うために作る」ですね。新しい企画として、パッケージマニュアルに着目します。「創る」工夫を、パッケージマニュアルにスポットを当てて考えてみようという趣旨です。マニュアルのローカリゼーションを扱うパネルディスカッションでは、パネリストは英語で発表を行います。これも新しい試みですね。

●最後に、基調講演についてひとことお聞かせください
基調講演は、プロダクトデザイナーの深澤直人氏にお願いしました。人間の行為とデザインの関係を奥深いレベルから解き明かしてくださるということで、楽しみな内容になりそうです。

(取材・構成:小谷 洋一)

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2003年度TC技術検定実施結果報告

去る2月22日に新しい枠組みで実施された2003年度の「テクニカルコミュニケーション技術検定試験」の結果を、「マニュアル制作ディレクション」中心に報告します。協会ホームページも併せてご覧ください。

検定実施結果を、過去の2級試験の結果と比較しながら検証してみましょう。

●得点分析
ディレクション試験の実技得点率が約55%、合計得点率も65%超ということで、過去の2級試験と比較するとかなり高い得点率でした。
始めての試験でしたが、協会発行の検定ガイドブックや検定セミナー、過去の受験体験を基に問題を研究されるなど、受験対策を行った方が多かったのでしょう。学科得点率の最高値が100%、つまり満点であったことから、試験範囲が広く深くなったにもかかわらず知識が豊富であることは確かなようです。ただし、TC技術検定試験では、知識だけ、技術だけでは必要な技能が備わっているとは評価しません。学科試験と実技試験の両方に必要な得点率を設定し、総合的に合否判定を行っています。

  最高 最低 平均
学科得点率 100.0 44.0 77.6
実技得点率 83.7 0.0 55.7
合計得点率 87.5 31.7 66.7

※学科得点率(%)=学科試験の得点÷学科試験の配点
※実技得点率(%)=実技試験の得点÷実技試験の配点
※合計得点率(%)=(学科試験の得点+実技試験の得点)÷(学科試験の配点+実技試験の配点)

●受験者と分析
受験申し込み書に書かれたアンケートの結果に基づき、経験年数と男女別に合格率を分析してみます。
ディレクション試験に受験制限はありませんが、おおよそ3年くらいの経験を想定しています。実際の合格率をみると、5年以上15年未満のグループが最も高くなっています。第1回目ということもあり、満を持して多くのマニュアル制作のディレクションに関わる人が受験したと思われます。したがって、その多くの方が5年以上のベテランであったということです。
男女別でみると、男性より女性の受験者が少ないにもかかわらず、合格者は女性の方が多くなっています。過去の試験でも、女性が男性の1.5倍から2倍の合格率でした。

経験年数 構成比 合格率 合格者数
なし 3.4% 16.7% 2
1年未満 2.0% 14.3% 1
1年以上3年未満 6.0% 19.0% 4
3年以上5年未満 14.4% 22.0% 11
5年以上8年未満 24.1% 45.2% 38
8年以上10年未満 9.5% 39.4% 13
10年以上15年未満 29.9% 42.3% 44
15年以上20年未満 9.8% 23.5% 8
20年以上 0.9% 0.0% 0

  回答数 構成比 合格率 合格者数
217 57.9% 29.5% 64
158 42.1% 43.0% 68

(まとめ:TC技術検定実行委員長 高橋 尚子)

合格者が誇れるような試験に育てたい
TC技術検定実行副委員長 山野辺 行俊

TC技術検定が始まったのは1997年度です。最初は3級試験だけの実施でした。私も、初回試験の受験者の1人で、どのような試験なのか不安に思いながら受験しました。3年後の2000年度からは2級試験が加わりました。さらに3年後にあたる今回は、従来の枠組みを大きく見直しました。学科試験と実技試験によって能力を検定するという従来のスタイルを踏襲しつつ、テクニカルライティング分野を初級と上級の2つの等級に置き直し、マニュアル制作ディレクションという区分を新設しました。
今回の試験で大きく変わったのは、制度自体の変更だけでなく、テクニカルコミュニケーションの現場にいらっしゃる皆様の実情やニーズに、少しだけですが歩み寄ることができたというところだと考えています。
すべての合格者の皆様が試験に合格したことを誇れるような試験に育つよう、今後も協力したいと思います。

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シリーズ:理事会社に聞く

株式会社リコー

会社プロフィール
1936年創業。「高性能技術を使いやすくする」ことを目指すコンプライアンス思想を核に、その事業領域は、画像系情報処理機器、ネットワーク対応機器からシステム開発までにおよぶ。平成14年度の売り上げは前年比4%増の1兆7千億円を計上した優良企業。

photo一に仕事、二にゴルフと、なにごとにも手抜きができない簔輪精久室長。そのためか、最近ついに過労でダウン。退院後は、心身のケアのために「巨樹めぐり」を始めました。「桜の樹を中心に、樹齢数百年の古木を見にあちこちに車を走らせています。樹に触れるとまさに生命と温もりを感じ、本当に癒されます」とのこと。


●まず、御社のマニュアル制作についてお聞かせください。
ドキュメントデザイン(DD)室にはドキュメント企画、システム開発、JLC(Japanese Localization Center)の3部署があり、総成員数は約50名です。DD室は、主にマニュアル制作の戦略・構想の策定を担い、制作の実務はグループ企業の(株)リコー三愛サービス(RSS)にほぼ全面的に委ねています。対象製品は当社売上げの約90%を占めるプリンター、複写機、ファクスなどの画像処理機器です。まずDD室内でマニュアル戦略・構想を策定し、商品開発センターへ提案、その承認を得ると、RSSに制作ガイドとともに依頼を出します。JLCは、多言語マニュアルのLocalizationを行うグループで、RSSが作成した英文マニュアルをコアに全世界の言語対応を行っています。制作した多言語マニュアルは欧州にあるELC(Europe Languages Center)を経由して現地の翻訳会社でネイティブチェックを受けています。
制作規模は、金額換算で年間約20億円となり、多言語対応が約50%を占めています。ページ数に換算すると、年間約4万ページとなります。紙と電子の比率でみると、プリンターはほぼ電子マニュアルに移行していますが、紙マニュアルであってもファイル形式はほぼ100%がPDFとなっています。

●現在どのような課題をお持ちですか。
第一に、ワールドワイドのローカリゼーション体制の構築です。従来は、よく見られるケースなのでしょうが、製品中心の考え方を脱しきれず、国内向けも海外向けも同じような構成やスタイルでマニュアルを制作していました。今後は、仕向け地ごとに顧客や文化のニーズに適応した制作を進める必要があると考えています。そのために、欧米各国でのマニュアルへのニーズ調査を定期的に実施し、それを制作に反映することにしました。調査の結果、使い方そのものに相違はなくとも、海外では日本の顧客とはマニュアルに求めるものが違うということがわかりました。たとえば、海外では、図やイラストの多用や、異なるフォントを駆使して文字表現にメリハリをつけることなどはさほど重視されません。
第二に、当社の主要製品である複写機のマニュアルのありかたです。同マニュアルは紙が主体ですが、これを電子化することによって、ユーザーの使い勝手の向上をはかることができます。当社にとっては、紙を使用しないことによる資源保護、コストの低減、また、カストマーサポートの効率化にもつながることになります。同時に複写機のようにユーザーが操作に十分修練しているものに対して、どこまでマニュアルに情報を盛り込むかも検討する必要があるかもしれません。開発部門との協業により試行してきたいとおもっています。
最後は、人材育成の面です。電子化の推進により、制作技術は大きく変化しています。電子化のための多様な表現技術や情報セキュリティに関する技術などについて制作メンバーをいかに育成するかです。DD室内の企画メンバーの企画能力、つまりカストマー志向にもとづくマニュアルの将来像やシステムを構築する能力の育成も重要な課題だと思っています。

●TC協会に今後期待されることはなんでしょうか
人材育成面での活動は整ってきていると思います。協会に対しての期待は二つあります。
 一つは、製品やオフィスの環境、さらに実際に製品が使われる場、たとえば職場での仕事のしかた(スタイル)がどんどん変わっていくなか、マニュアル自体も変化していかなければならないと思います。しかし、マニュアルの将来像に関しての研究がありません。協会では、ぜひ、研究の場を整えて、将来像を検討していただきたいと思います。もちろん、研究には、私たち会員のほか、学識経験者やデザイナーなど関係者が参加し、協議し、指針ができれば、ありがたいですね。
次に、マニュアルの企画構想の過程で疑問や迷ったことについて、そのつど相談でき、指導していただけるような仕組みをつくってほしいですね。ただし、新製品に関する情報は、機密情報の管理面からも難しいと思いますので、既存製品マニュアルでの制作プロセス及びアウトプットに対するレビューや指導をしていただければと思います。
この二つは、協会だからこそできるサービスだと考えますので、実現を期待します。

(取材・構成:三堀 邦夫、小谷 洋一)

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株式会社 十印

会社プロフィール
1963年設立。翻訳・編集サービスを皮切りに、各種マニュアル制作、ドキュメントシステムの構築事業に加え、現在はユーザインタフェース、マニュアル、ヘルプやWEBサイトのローカリゼーションを中心にビジネスを展開し、経験と実績でクライアントから高い評価を得ている。

photo50歳を機に一念発起、毎朝出勤前の10kmマラソンを日課となさった石川社長は、繊細な外見とは裏腹にタフさもかね添えています。「この半年、業務多忙のため中断しているので体調の変化が気掛かりですね」。休日には中三の息子さんのラクビーのパスの相手をされるよきパパでもあります。

株式会社十印のコンテンツ事業本部長であり、株式会社十印R&Dの代表取締役社長を務められる石川諭さんにお話をうかがいました。

●十印のビジネスについてお聞かせください
80年代は社員数300名、年商も40億円に達し、そのうち半分はマニュアル制作で、「マニュアルの十印」と唱っておりました。しかし、バブル崩壊を機に年々需要が減少してきました。外部へのマニュアル制作発注がコストや機密保持の点から抑制され、自社内での制作に切り替わってしまったことが主な原因です。その後、コストへの要求はさらに厳しくなり、マニュアル制作は、ビジネスとしての採算がとりにくい状況になってきています。制作会社の中には、印刷を含めての一括制作受注で利益を確保されておられるところがありますが、印刷設備を持たない当社の場合、それに替わる付加価値をつけることが急務でした。1998年ころからローカリゼーション事業が急速に成長し、現在は当社事業の75%にもおよんでいます。発注先の60%はグローバルにビジネスを展開する海外企業です。最近になって、マニュアル制作もこのローカリゼーションとコンテンツマネージメントを付加価値として、日本のお客様から多数のご発注をいただけるようになってきました。たとえばXMLでコンテンツを制作、翻訳メモリを使って多言語化し、ソフト、紙マニュアル、オンラインヘルプ、WEBコンテンツなどへ展開するとともに、制作したコンテンツは次期バージョンで再利用できるようにコンテンツマネージメントシステムで管理する。これら一連のフローを世界中のローカリゼーション・パートナーとともにオートメーション化することで、「コンテンツのライフサイクルにわたるサービス」を提供できるようになりました。

●ビジネス展開上での課題は何でしょうか
お客様側の組織の壁を何とか乗り越えることでしょうか。日本の場合、お客様のマニュアル制作部門は、製品やユーザインタフェースを開発する開発部門と組織上分かれているところが多く、ユーザインタフェースとマニュアルのコンテンツをシンクロナイズさせることによる効率化の提案ができない、という現状があります。グローバルに商品を提供するなら、当初から多言語を見据えた製品やインタフェースの設計をしていく必要があります。このような改革のためには、外部からは難しいことですが、役員クラスの方にソフトの設計やコンテンツをROI的な視点で捉えていただき、効率的な組織づくりをご提案することも大切だと思っています。
日本人はビジュアルコンテンツを好み、米国ではテキストを主体にする、というような文化的な違いはよく知られていることですが、細部にわたる品質の高さを求めるという点では共通しています。ヨーロッパも含めた他の地域に比べ、コスメティックな部分へのこだわりが強いのです。しかし、ここでも品質ということの中身には違いがあります。米国でのマニュアルの品質とは徹底して標準化することで、コストをかけずにそれを生み出すプロセスやフローを重視するROI的な視点が表裏をなしています。日本では手工業的な取り組みが多く、バラつきや曖昧性を排除するのに多くの手間をかけています。日本だけどうしてこんなにお金がかかるの?とよく聞かれます。言葉の複雑さもありますが、要するにこだわりがありながら、何が品質かということが一定しないうえに、コストバリュー的なプロセスがないからだと思います。弊社がローカリゼーションを通して体得したプロセスや技術をアレンジして、日本のお客様にもご提案していきたいと考えています。

●マニュアル制作環境の今後の変化の見通しは
当社が目指すグローバリゼーションとコンテンツマネージメントがキーワードになると思います。また、組織的にいえば、開発部隊と連携したマニュアル制作部門や、コールセンター、トレーニング部門が一体となってカストマーサポートとして機能するとともに、マーケティング部門との関係も強化されてくると思います。

●協会活動に対するご感想をお聞かせください
TCシンポジウムには、多大なメリットを感じています。知識や技術、動向に関する情報収集、参加者との人脈づくり、ビジネスチャンスの拡大など、当社にとって有意義な点が多いと思います。次に、協会への期待ですが、マニュアル制作の業界団体というにとどまらず、誰もが知っている団体になるよう知名度をもっと上げるとともに、加盟企業の業種を拡大してほしいと思います。もうひとつは、協会に、コミュニケーション、たとえば、文書に関するスタンダードをぜひとも作ってもらいたいと思っています。

(取材・構成:三堀 邦夫)

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TC-INFORMATION

会員企業ひとことメッセージ

■株式会社 島津製作所
●会社概要
計測機器、航空機器、医用機器、半導体機器を中心とする製造会社。科学立国を理想に掲げ、1875年に創業された歴史ある企業。

●マニュアル制作について
自由に、自分たちの思いを込めて制作しています。社内教育にあたっては、TC技術を広める観点からの啓蒙を主眼にしています。

●協会にひとこと
TC協会には、マニュアルを主体としたユーザビリティ改善のための情報交換を目的に入会しました。製品の付加価値を高めるには、顧客本位のマニュアル作りが必要です。そのために、協会をとおして業界の動向を迅速に把握したいと思っています。島津製作所自身も、TCシンポジウム実行委員会へ参加するなどの活動をしており、マニュアルコンテストで2度受賞の栄誉も得ています。
TC技術へのニーズはマニュアル制作に限りません。TC協会は、さまざまな業界と交流して、オピニオンリーダーとして社会全体のテクニカルコミュニケーション技術の向上に努力していただきたいと考えます。

■株式会社シイエム・シイ
●会社概要
1962年創立。「情報にクオリティを」をスローガンに、クリエイティブ・マーケティング・コーディネーターとして、お客様の情報資産を高精度かつ効果的に活用するコミュニケーション技術・ツールの開発を進めています。

●マニュアル制作について
マーケティングの観点から、ユーザーサポートの一環として、各種マニュアルの企画、制作を行っています。よりわかりやすいマニュアルをめざして、いろいろな技術を駆使しています。

●協会にひとこと
広範囲のTC関連情報を収集し、活用したいと考えて入会しました。協会には、もっと法人会員メリットを出していただきたいという希望があります。マニュアルコンテスト実行委員としての活動を通して、情報収集や自己研修のメリットがありましたが、それに費やす時間とお金はかなりな負担になっています。当社は名古屋にありますが、中部地区の会員を増やすためにも技術検定試験を名古屋で実施していただけないでしょうか。名古屋でなら受験する、と考える人もかなり見込めます。

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協会短信

テクニカルコミュニケーター育成セミナーが始まります

新設された「テクニカルコミュニケーター育成セミナー」がいよいよスタートします。5月から10月まで8月を除く5か月間、毎月2回の実施で全10回という、協会としては初めての長期セミナーです。講師陣もこれまで各種のセミナーでご活躍いただいた方に加え、外部からもプロの講師2名をお迎えしました。総勢9名で、基本教材とするTC検定試験ガイドブック〈ライティング編〉の全領域をカバーします。テクニカルコミュニケーションの基礎から、総合的な能力の育成を目指す、企業の新人育成などの要望にも応えられる充実した内容になっています。勤務のあとに参加しやすいよう、開催時間も18時30分から2時間としました。
このセミナーでは、全課程終了者には修了証を発行します。募集人数は20名と少なめですが、その分参加者と講師のコミュニケーションが深まり、密度の濃いセミナーが実現できるものと期待しています。
ぜひとも、多くのお申し込みをお待ちしています。

プログラム

  1. 企画・構成・表現設計
  2. ライティング1 文法・用字・用語
  3. ライティング2 文章表現
  4. ビジュアル表現1 デザインレイアウト
  5. ビジュアル表現2 色彩、表現、イラスト図表
  6. 制作工程・編集・校正・印刷・製本
  7. 編集ツール
  8. 電子マニュアル
  9. 認知心理学・評価・ユーザビリティ
  10. 関連法規・PL・著作権

なお「マニュアル制作実務セミナー」は、従来から実施してきた「基礎セミナー」に経験者向けの「ディレクションセミナー」を新規に追加し、より実務に密着したセミナーとして実施します。

(セミナー専門委員長:川瀬岩夫)

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関連団体からのお知らせ

■ビジュアルコミュニケーション協会からのお知らせ
日本ビジュアルコミュニケーション協会では、年間を通して各種の講座・セミナーなどを開催しております。ホームページに年間予定表を公開していますので、興味のある方はぜひご覧ください。

●問い合わせ先
〒183-0031 東京都府中市西府町1-38-9
日本ビジュアルコミュニケーション協会 事務局
TEL/FAX: 042-302-1407
E-mail:こちら
URL:http://www.javc.gr.jp/

■テクニカルコミュニケーション研究会からのお知らせ
TCの普及、テクニカルライターの技術向上、社会的認知、地位向上を目指す、所属、職種を超えた個人参加の研究会です。メーリングリストを中心に活動しています。年会費5,000円のみ、入会金なし。
どんな会か知りたい方のために1か月の無料お試し入会制度あり。ご希望の方はこちらへメールをください。

●問い合わせ先(連絡はメールかファクシミリでお願いします)
107-0052 東京都港区赤坂 8-7-18
(株)シー・ディー・エス気付 TC研究会事務局
E-mail:こちら FAX:03-5411-5961

■ヒューマンインタフェースシンポジウム2004のご案内
開催日:2004年10月6日(水)〜10月8日(金)
会場:京都リサーチパーク(京都市下京区。こちら
発表形式:一般発表、対話発表、企業展示

問い合わせ先:ヒューマンインタフェース学会事務局
Tel 075-315-8475/075-326-1331
Fax 075-326-1332
E-mail:こちら
URL:http://www.his.gr.jp/

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TC協会ニュース 第62号 2004年5月31日発行
*次号は2004年8月15日発行の予定です。
*会員連絡先が変更になった場合は、TC協会事務局(こちら)までご連絡ください。

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