TC協会ニュースWeb版 第59号
人・モノ・情報の関係を問い直す
新しいコミュニケーションの地平とそれを支える基本理念
〜TCシンポジウム2003閉幕
満席の分科会会場
テクニカルコミュニケーションシンポジウム2003は、8月28日、29日の両日、工学院大学(東京・新宿)でおよそ960人の参加者を集めて開催された。テーマは「人とモノとの快適コミュニケーション〜情報をデザインする」。モノとは何か、モノと情報との関係とは、といった問いを問い直すことによって、情報をどう見せれば(デザインすれば)人とモノとの間に快適なコミュニケーションが生まれるかを考えよう、そこから、テクニカルコミュニケーションの基本をとらえなおそう、という企画趣旨だ。
■開幕
シンポジウムは、海保TC協会会長、TCシンポジウム2003実行委員長の小林氏(リコー)、そして経済産業省商務情報政策部文化情報関連産業課の小林氏の挨拶で始まった。経済産業省の小林氏は、挨拶の中で、「私どもは、2005年に日本がITの最先端国家になり、以降もそうあり続けることを目標にしています。そのためのインフラは整いつつあるのですが、そこにある情報通信機器といったものをどう活用していくか、あふれる情報をどう選別して利用者に伝えていくかが、今後ますます重要な課題となってきます。この新しい時代にさきがけてTC技術やノウハウを表明していくTCシンポジウムは非常に意義のあるものと考えます。情報をどうデザインしてわかりやすい形で伝えるか、ということに対して、私どもも積極的に応援いたします」とお話しされた。
続く基調講演では、竹村真一氏が、モノから意味が遊離しモノがブラックボックス化してしまった20世紀の反省を踏まえ、モノそのものに意味(情報)を語らせることの必要性を説いた。
■充実した分科会、セミナー、発表
2日間にわたる会期中、分科会8本、セミナー6本、発表23本が行われた。
分科会04「ディレクションに必要な知識・スキルとは」では、メーカーや制作会社でマニュアル制作のディレクションを行っているパネリスト(馬越氏−NECデザイン、勝田氏−ハイテクノロジー・コミュニケーションズ、増山氏−ソニー)が、三者三様にディレクションの「勘どころ」を披瀝した。ライティングやデザインの実務の経験がないままディレクションをしなければならない立場の人も増えているようだが、そのような人たちには大いに参考になったに違いない。
分科会02「ヨーロッパ多言語マニュアルの制作方法の現状と問題点」では、コーディネーターの徳田氏(パセイジ)と三人のパネリスト(久保氏−ページファクトリー、中村氏−ヤマハ、吉田氏−パイオニアメディアクリエイツ)が、和文あるいは英文のマニュアルのローカライズの現状、問題点、解決策を、たくさんの具体例とともに討論した。
発表16「動画とウェアラブルPCを融合させた次世代マニュアル」では、いつでもどこでも「見ること」のできる動画マニュアルの事例が参加者の注目を集めていた。
■コミュニケーションを支えるものは
発表22「TCの未来と教育への応用」でTCの未来を考察し、そのひとつの方向性として「教育」という形での発展を提示した森口氏(大阪府立大学)は、「文章を書く上での読み手への思いやり」について述べて発表を結んだ。これは、基調講演で竹村氏いうところの「新しいコミュニケーションでも相手の存在を感じられることが重要」に通ずるところでもある。
(取材・構成 小谷 洋一)

基調講演
「ユビキタス時代のメタ情報デザイン 〜現物・現場主義の提言!」 東北芸術工科大学教授/(株)プロジェクト・タオス代表 竹村真一氏
竹村 真一氏
■情報デザインとは
情報デザインという仕事によって、わたしたちの世界経験をいろいろな形で表すことができます。情報デザインとは、紙の上にわかりやすいことばを並べることでも、映像でインパクトのあるものを作ることでもありません。これらの手段でわたしたちの生きた現実をどう経験させるかが主眼です。デジタルメディアという新しい手段を身につけた人類が地球の上でどう進んでいくのかという関心は人類学者だけのものであってはなりません。みなさんのデザインが社会の風景を創り、あとに続く子供たちの世界経験のありかたを規定するのですから。何かを見せることは何かを隠すことでもあり、世界経験の多くのチャンネルを閉ざしてしまう危険性も持っているのです。
■ユビキタス時代におけるモノと情報
いままで、情報はモノと切り離されたところにあった。商品がここにあるのに対して説明は紙やウェブ上でなされる、といった具合です。しかし、モノとは、もともと自ら語るものです。「物」という語は、霊的な意味も含んでいました。ところが、西洋を中心にわたしたちはモノから霊的なあるいは象徴的な意味を払拭しようとしてきた。その結果、情報はモノから切り離され、たとえば商品に対するパッケージデザイン、マニュアルデザイン、広告デザインといった具合に矮小化されてしまったわけです。
ユビキタス時代になると、モノと情報がどんどん近づいてきます。商品は技術部が作っているので、説明をするわれわれの関知するところではない、という態度は成り立たなくなります。情報デザインの仕事を、「モノを媒介にした世界経験全体のありかたをデザインする」という大きな定義にリセットしなくてはならないのです。
■わたしたちとモノとの関係
「人とモノとの快適コミュニケーション」というテーマは、口でいうほど簡単ではありません。わたしたちは日常モノを使っていながらモノのことを何にも知らない。人間とモノとの関係は非常に疎遠です。車の100馬力とは、おすもうさん300人分の力に相当するのだそうです。その車が、発進してから時速100kmに達するまで10秒かかるとしても、停止するまでには3秒しかかからない。エンジンが100馬力とするとブレーキには300馬力、つまりおすもうさん約1000人分の力を要するというのです。時速100kmで走っている車にはおすもうさん1000人分のブレーキがついている。このようなことをみなさんは伝えようとしているでしょうか。私は、こういった基本的理解(リテラシー)や知識の創造こそ社会に必要だと考えます。
■新しいメディアがもたらす人とモノとの関係
今は、新しい技術(インターネット、携帯電話など)により人とモノとの関わり方を根本的に組み替えていくチャンスの時期ととらえるべきです。インターネットという新しい器に、テレビにも盛られていたような古い料理を盛っているだけではもったいない。メディアは、アレキサンドリア図書館に代表されるシアター型、活版印刷によって可能になったパッケージ型の段階を経て、世界の生きた風景、あるいはすべてのモノがそのまま情報を語るユビキタス型へと革命的な移行を遂げつつあります。そのような状況の中で情報デザイナーは何をなすべきでしょうか。モノを媒介とした豊かな世界経験に人間をつなげ直していくテコとしてユビキタス技術を活かせるかどうかが問われているのです。それだけに、わたしたちは非常に面白い時代にあります。みなさんは、仕事の結果物を社会の公共財として生産している限り、否応なしにこのプロセスのバイタルな部分を担っているわけです。
■インターネットとユビキタス
私は、インターネットはまだまだ未開の技術と考えています。私自身、インターネット上でいろいろな実験を試みています。地震を例にとると、大地震のようすをウェブ上で流すだけならテレビや雑誌でもできる。そうではなく、今、地球が揺れていることをウェブ上でリアルタイムに「経験」できるようにする、そんな試みを行っています。地震とは、地球の健康な呼吸のプロセスであり、地震災害が起こるのは、その地球と共生しうる準備ができていないだけなのだ、ということがわかるようになっています。そして、わたしたちはインターネットを介して地球大の神経系につながることができるのです。ここから、新しいコミュニケーションの可能性が生まれてきます。
情報デザインというと、どうしても、伝えるべきメッセージをどう効果的に伝えるかということに神経を集中しがちです。しかし、コミュニケーションには「図」と「地」があります。私は、この「地」の部分、たとえば、コミュニケーションしている人の「存在感」といった情報のほうがずっと大切だと思っています。
インターネットは、決してサイバースペースなどではありません。現実世界とつながっているメディアであり、それをさらに現実世界に着床させるためのキーワードがユビキタスということです。その観点から、インターネット上の情報もデザインされなければなりません。
■モノをネットワークの中でとらえる
車は、車社会というシステムの中の細胞としてとらえる必要があります。車を、駐車場や道路、都市といったネットワークの中のひとつの部分としてとらえると、新しい車の可能態がみえ、車のデザインが根本的に変わってきます。幼稚で暴力的な段階にある車社会を市民レベルで進化させていくためにも、可能態を共有せねばなりません。モノがブラックボックスである限り、人とモノとのコミュニケーションなど想像もできません。ブラックボックスの中身はどうなっているのかというリテラシーを喚起するような情報デザインが、これからの社会の可能性を引き出していくのです。
(まとめ:小谷 洋一)
■竹村真一(たけむら・しんいち)■
1959年生まれ。東北芸術大学教授。(株)プロジェクト・タオス代表。生命科学や地球環境論を踏まえたトータルな「人間学」を構想するかたわら、自らデジタルメディアの可能性を開拓する実験プロジェクトを数多く手がける。主な著書に『呼吸するネットワーク』(岩波書店)、『22世紀のグランドデザイン』(慶応大学出版会:編著)。

テクニカルコミュニケーション技術検定試験の概要
■実施概要
| ・試験年月日 |
2004年2月22日(日) |
| ・試験会場 |
東京、大阪(予定)
※20名以上の団体申込の場合は、団体の用意する会場で受験することができる(団体受験) |
| ・受験資格 |
TC協会の会員、非会員を問わない。
ライティング初級、ディレクション試験:制限なし
ライティング上級:初級試験、または従来の3級試験の合格者 |
| ・受験料 |
初級試験:\12,000(会員\8,000)
上級試験:\15,000(会員\10,000)
ディレクション試験:\18,000(会員\12,000)
すべて消費税込み
※会員とは、TC協会の法人会員の場合、団体での申し込みに限る。個人会員の場合、本人に限る。 |
| ・申込期間 |
2003年11月1日〜11月末日 |
| ・合格発表 |
2004年3月下旬(予定) |
■試験問題の形式と時間
| ・ライティング初級 |
学科(50問60分)、実技(60分) |
| ・ライティング上級 |
学科(50問60分)、実技(90分) |
| ・ディレクション試験 |
学科(50問60分)、実技(90分) |
■検定する技術要素(共通)
|
大区分 |
中区分 |
| 1. |
企画・構成・表現設計 |
企画、構成、表現設計 |
| 2. |
ライティング技術 |
日本語文法、用字・用語、文章表現 |
| 3. |
ビジュアル表現 |
レイアウト・デザイン、イラスト・図表・グラフ |
| 4. |
制作に関する技術 |
制作工程編集・校正印刷・製本制作ツール |
| 5. |
紙以外のメディアに関する技術 |
特徴・種類、制作工程、検証、制作ツール |
| 6. |
付帯する技術 |
ユーザー理解、マニュアル関連法規、マニュアル作成時の考慮事項、最新技術動向 |
| 7. |
評価・管理 |
評価、管理 |
■受験のための手引き
●技術検定ガイドブック
- 「テクニカルライティング分野 ガイドブック」\3,800(消費税込み)
- 「マニュアル制作ディレクション分野 ガイドブック」\4,200(消費税込み)
●TC技術検定セミナー
- ライティング上級
東京地区 12月4日(木)、2003年1月14日(水)、1月29日(木)
大阪地区 12月13日(土)
- ライティング初級
東京地区 12月5日(金)、2003年1月15日(木)、1月30日(金)
大阪地区 12月13日(土)
- ディレクション試験
東京地区 11月7日(金)、2003年1月16日(金)
大阪地区 12月13日(土)
受講料:\10,000(会員\5,000)
※会員とは、TC協会の法人会員の場合、団体での申し込みに限る。個人会員の場合、本人に限る。
※テキストとして、技術検定ガイドブックを使用。
■TC技術検定試験についてのお問い合わせ先
TC協会事務局 Tel:03-3368-4607 Fax:03-3368-5087 お問い合わせ先 TC検定ホームページ

TC-INFORMATION
研究会からの連絡
■テクニカルライターの会
【これまでの活動内容(平成15年度)】
●第1回定例会および第1回交流会
- 日時:平成15年7月9日(水)14:00〜18:00
- 場所:財団法人関西情報・産業活性化センター第1会議室
- 内容:
- 基調講演
- 「伝わる文章の書き方」(文章表現)
講師:大阪府立大学 名誉教授 樺島忠夫氏
- 会員情報交換会
- 会員相互懇親会
●第2回定例会
- 日時:平成15年8月6日(水)14:00〜16:00
- 場所:財団法人関西情報・産業活性化センター第1会議室
- 内容:
- 事例発表1
「従来の取扱説明書のおもいきった改善」
発表者:株式会社島津製作所 CS統括部マニュアル支援グループ係長 畝本あい子氏/辻岡啓司氏
- 事例発表2
「ナレッジデータベースの現状」 発表者:株式会社ケーエスアイ 営業1部ソリューション室課長 森川博正
●第3回定例会
- 日時:平成15年9月17日(水)14:00〜16:00
- 場所:財団法人関西情報・産業活性化センター第1会議室
- 内容:
- 「見やすいレイアウト」
発表者:株式会社三菱電機ドキュメンテクス クリエイティブ開発部マニュアル製作センター 奥澤喜由氏
● 第4回定例会・見学会
(ダイハツ工業株式会社 本社工場訪問)
- 日時:平成15年10月22日(水)13:30〜16:30
- 場所:ダイハツ工業株式会社 本社工場
- 内容:
- 工場見学(同社 広報部対応)
マニュアル制作部門との意見交換会 (同社国内サービス部 整備技術支援室)
【今後の予定】
●第5回定例会
- 日時:平成15年12月10日(水)14:00〜16:00
- 場所:財団法人関西情報・産業活性化センター第1会議室
- 内容:「“DTP”〜 効率化を図る 〜」
●第6回定例会
- 日時:平成16年1月21日(水)14:00〜16:00
- 場所:財団法人関西情報・産業活性化センター第1会議室
- 内容:「“翻訳関係”〜 今後の翻訳に望まれる要素 〜 」
●フォーラム
- 日時:平成16年2月18日(水)14:00〜16:00
- 場所:財団法人関西情報・産業活性化センター第1会議室
- 内容:「新しい時代のマニュアル作成における諸問題」
【本会のホームページ】
詳細情報はホームページ(こちら)をご覧ください。
■日本ビジュアルコミュニケーション協会 (JAVC)
JAVC研修旅行「伊豆半島ビジュアル発見の旅」
- 日時:平成15年11月15日(土)〜16日(日)
- 会場:伊豆半島
- 参加費:\15,000
※詳しくは事務局まで問い合わせください。
●お問い合せ・申し込み方法
TEL/FAX 042-302-1407
E-メール(こちら)
〒183-0031 東京都府中市西府町1-38-9
日本ビジュアルコミュニケーション協会 事務局
■テクニカルコミュニケーション研究会
テクニカルコミュニケーション研究会は、TCの普及、技術向上、社会的認知、地位向上を目指す、所属、職種を超えた個人中心の研究会です。メーリングリストを中心に活動しています。
年会費は5,000円、入会金はありません。
どんな会か見てみたい方は、1か月の無料お試し入会制度をどうぞ。ご希望の方はこちらへメールをください。
【連絡先】(連絡はお手数ですがメールかファクシミリでお願いします)
メール:こちら
ファクシミリ:03-5411-5961(シー・ディー・エス気付)
〒107-0052 東京都港区赤坂8-7-18
ハイトリオ赤坂8丁目 502号室
(株)シー・ディー・エス気付 TC研究会事務局

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